スター・トレック ヴォイジャー シーズン1 #1 「遥かなる地球へ」 その11
医療室 続き
デルタ宇宙域にヴォイジャーが飛ばされ船内がメチャメチャになっている中ドクターが初起動された場面の続きです。
吹き替え:ドクター「直ちに医療部員の補充を申請したまえ。私はあくまで緊急時の短期対応用プログラムだ。」
英語:"A replacement must be requested as soon as possible. I am programmed only as a short-term emergency supplement to the medical team."(「交代要員の要請は出来るだけ早くしなくてはならない。私は医療チームの緊急時における短期的なヘルプとしてプログラムされているだけなので。」)
前回も書いた通りドクターは「申請したまえ」のような高圧的な言葉は英語では特段使っていません。2つ目の文章の意味はほぼ同じと言って良いと思います。
「ヘルプ」と書きましたが英語では「supplement」と言っています。「付加」「補足」「付録」の様なニュアンスです。自分は本来の医療チームを補足、補佐する為にプログラムされたと言っています。
吹き替え:トム「でも当分ドクター一人が頼りですよ」
英語:"Well, we may be stuck with you for a while, Doc."(「暫くはあなたで我慢しなければならないみたいだよ、ドク。」)
この辺もニュアンスは全然違いますね。
前にも書きましたがそもそもドクターは、前の記事でも書いた通り、階級が無いし、そもそもプログラムですからトムやハリーはドクターが上官と思っているニュアンスは全くありません。
トムが使った"stuck with you" ("stuck with someone")と言う表現は、相手のことを我慢しなければならない、その相手と何とかやって行かなければならない、といったニュアンスです。
"stuck"は"stick"の過去・過去分詞です。この場合"stick"の意味は「貼り付ける」、「くっつく」といった意味です。
つまりトムやハリー他ヴォイジャーの乗組員はドクターと貼り付いちゃった訳です。好むと好まざるにかかわらず。
近くに連邦のドクターは居ませんから「暫くはあなたで我慢しなきゃならないみたいだよ」とトムは言ったのです(トムらしい軽い皮肉を込めて)。
そして"doc"とはもちろん"doctor"の事です。略語といった感じでしょうか。非常に口語的なくだけた表現で、初めて会った目上の人に使う表現ではありません。そこから見てもトムがドクターを上役と感じていない事は明白だと思いますし、吹き替えが敬語なのは不自然だと感じました。
少なくとも宇宙艦隊は軍隊的な組織ですから上官的な存在と認識していたら"doctor"若しくは"sir"と呼ぶはずなんです(何せ初対面ですし)。